気ままにゲームする

プレイしてきたゲームの記録。つらつらと私見を語るだけ。

【ICEY】第四の壁をぶち壊してナビゲーターをおちょくれ!

前置き

スクショ、ネタバレあり

今回はICEYを実際にプレイした感想をつらつらと書いていきたいと思う。ICEYはロックマンのような、2D横スクロールアクションゲームである。しかし2Dマリオの森ステージで詰んでしまうほどゲームが下手くそな私にとって、横スクロールアクションは積極的に手を出すジャンルではない。では何が決め手となってICEYをプレイするに至ったか。
その理由はシンプル、下野紘である。

ICEYとは?

ICEYとはどんなゲームか。わざわざ私が説明するより、マイニンテンドーストアのソフト紹介ページを見てもらった方が早い。

メタ視点のナレーションが笑いを誘う、第四の壁をぶち壊せ
『ICEY』は横スクロール型2Dアクションゲームだ。君はナビゲーターの指示に従い、ICEYの目を通してこのゲームの世界の真相を解き明かさなくてはならない。
しかし、その真相は――『ICEY』は横スクロール型2Dアクションゲームではないかもしれないし、君はICEYの目を通して世界を見ることも、世界の真実を解き明かすこともないかもしれない。

『ICEY』の本質はメタ要素にこそある。プレイヤーはナビゲーターの指示に抗い、「ゲームとは」「真相とは」といった命題と向き合うことになる。『ICEY』の中で、君が演じるのはICEYであり「君自身」ではない。
しかしそれすらも絶対ではなく、君は「君自身」を演じ、「君自身」としてICEYを操作することもできる。
そう、これはアクションゲームの皮をかぶった罠なのだ。

さあ、今こそ物語の真相を解き明かす時だ。

ICEY,I SEE。

(マイニンテンドーストアより引用)

上記がICEYのすべてである。主人公のICEYは無口で無表情、攻撃時のボイスすら無い。その代わりに、ICEYを導くナビゲーターがこれでもかというほどたくさん喋る。そのナビゲーターのCVを担当しているのが下野紘なのだ。ぶっちゃけ言ってしまうと、このゲームの面白さは8割ぐらい下野紘の一人芝居で成り立っているように思う。彼がいなければ、ICEYはただの2Dスタイリッシュアクションゲームになってしまうのだ。

基本的にナビゲーターは「ICEYは研究所を出た」とか「強敵を倒したICEYは次のエリアに進んだ」とか、地の文を淡々と読むように喋る。プレイヤーが詰まないよう、次にするべきことを「ICEYは○○した」というかたちで示してくれる。

こういう感じ。

私は下野紘の声が好きなので、これだけでもかなり満足感があった。これは私の趣味でしかないのだが、ナショジオディスカバリーチャンネルでナレーションをする時のキャラを作っていない声優の声が大好きなのだ。

話をICEYに戻して……先述の通り、基本的にナビゲーターはナビゲーターとして必要最低限の関与しかしてこない。しかしそれは、プレイヤーが素直にゲームを進めた場合のみ。このゲームの真髄は、ナビゲーターに反抗し彼を憤怒させるところにある。
例えば、チュートリアルを済ませた後最初に行くステージに崖がある。本来ならば近くにあるマシンを操作して橋をかけるのが正解なのだが、ここでナビゲーターの指示に反してわざと何回も崖に落ちていると、なんとナビゲーターがキレる。キレるし、「こんな簡単なことも出来ないのか」と説教までしてくる。その先のジャンプして毒沼を渡るシーンで毒沼に落ちると、「この程度も飛び越えられないのか」とため息まじりで蔑んでくる。

このナビゲーター、かなり感情豊かで、プレイヤーの行動次第で泣いたり笑ったり怒ったりする。ステージ探索中に「そっちには何も無いって言っただろ!!」とキレられた時は素で笑ってしまった。そう、このゲームはプレイヤーが想像するより積極的に第四の壁をぶち壊し、こちらに話しかけてくる。

キレても言うことを聞かない場合は切にお願いするナビゲーター。

こっちからナビゲーター側に干渉することもできる。

とにかくナビゲーターをおちょくる

最初に述べた通り、私は下野紘目当てでこのゲームを買った。下野紘にキレられ罵倒され愚痴を聞かされ、時には泣かせたりも出来る今作には大満足である。このゲームの巧みな点は、ナビゲーターの面白いセリフを聞くためには彼に逆らわなければならない点だ。何も彼は常にカリカリしている訳ではない。プレイヤーが彼の指示を無視してやんちゃばかりしているから彼はプッツンしてしまうのである。どれだけナビゲーターに説教されようとも、そもそもの要因はプレイヤー側にある。つまり、ナビゲーターのキレ芸は一方的でも理不尽でもないのだ。だからこそ、プレイヤーはストレスを感じることなく彼のキレ芸を楽しむことが出来る。

ナビゲーターの指示を無視しすぎると拗ねて別ゲーをプレイさせられる。


あんまりやんちゃしてると記憶を削除されることも。


実はこのゲーム、普通にラスボスを倒してもクリア扱いにはならない。スタッフロールは流れるがそれはフェイク。

サウンドのところが「ナビゲーターがネットで拾ったBGMとSE」とふざけた表記になっている。トゥルーエンドにたどり着くには実績を解除するしかないのだが、その実績の半分ぐらいはナビゲーターに逆らわなければ解除出来ない。つまり公式側がナビゲーターの指示に反する遊び方を推奨しているのだ。寄り道をしてイベントを見ることで実績を解除、ステージ選択画面に戻りまた次の実績を解除……という流れだ。

ちなみに、素直に指示に従うとナビゲーターが大げさに感動する。よほどプレイヤーのことを信用していなかったのだろう。


この実績イベントだが、当然ナビゲーターが深く関わってくる。どれも面白くて好きなのだが、私は特にナビゲーターが撃たれるイベントが好きだ。CV下野紘のみっともない命乞いを聞けるからである。これは完全に私の思想なのだが、ショタショタきゃぴきゃぴした下野紘ボイスがあんまり好みではなく、どちらかというと好青年的な、大人な感じの落ち着いた雰囲気の演技の方が好みだ。今回のナビゲーターはちょっと人格に問題があるゲスい感じだったが、それも大変好みだった。ナビゲーターは完全にメタ要素なので、たまに彼の声に合わせて布が擦れる音や何かがぶつかる音が聞こえてくることがある。イメージ的には、通話しながら同じゲームを一緒に遊んでいる感覚に近い。とあるイベントの、椅子から立ち上がるような音の後に「ふぅ、ふっ、ふー……っ、」と今にも死にそうな呼吸を繰り返すナビゲーターがとってもとっても良かった。撃たれるイベントも撃たれた後にしっかり呻くのがポイントが高い。

ナビゲーターの妻からの着信から始まるという、とんでもないイベント。ボイスドラマを聞いているようで面白かった。

あとは「くそっ、恩を仇で返す気か!」の「くそっ」の発音、イラつきを隠せない「おい……」、ヒステリックな「殺せ!」という叫び、妙に甘く響く「おやすみ」……やはりCV下野紘は伊達じゃない。個人的なCV下野紘の推しキャラが正義の人なので、同じCVのナビゲーターから「臆病者!」と罵られるのは大変に良い経験になった。

ここに書いてあるイベントがちょっとでも気になったらぜひ実際にプレイして、下野紘の演技を堪能してみてほしい。

さいごに

ともかく、ICEYは下野紘のファンなら買いだ。下野紘の怒声、泣き声、鼻歌、咳払いにゲップまで堪能出来てしまうからだ。これでナビゲーターの一人称がひらがなの「ぼく」だったら本当に頭がおかしくなっていたと思う。こういうゲーム、他の声優でもやってくれないだろうか。森川智之とか、近藤孝行とか、竹本英史とかで。

逆にUndertaleを100倍濃くしたようなメタネタに寒さを感じてしまうゲーマーにはおすすめ出来ない。

こういうのとか

こういうの。
ICEYは基本的にこのノリで進む。

アクション要素はそこまで複雑じゃないし、一部の敵が頭おかしいぐらい強いが何時間かかければ撃破出来る。そこはアクションゲーム下手勢の私が保証しよう。ぜひナビゲーターをおちょくりながらトゥルーエンドまで行ってみてほしい。クリア後にはきっと「面白いゲームだった」と思えることだろう。

冒涜的な神々の存在にはご注意を。